丈夫な幹を天に向かってまっすぐに、根を下に伸ばすフクギは、海辺の家々を囲むように植えられ、沖縄の猛烈な台風から人々の暮らしを守ってきました。このような集落は、琉球王朝時代に沖縄各地で区画整理されたものだといいます。
数十年を遡ってみるだけでも、戦争や戦後の道路拡張、電気の普及などとともに、フクギ並木という沖縄の原風景が各地で失われていったことが想像できます。
一方で、約1kmの道に、1万9232本のフクギ。本部町備瀬に残った風景があります。守り残したのはここで暮らしてきた人たちです。
「NPO 備瀬・島づくりの会」の喜屋武信さんは2006年から備瀬で民宿「ちゃんやー」を営んでいます。
「本家で三男の子どもが宿をやるなんて、沖縄では考えられないこと」という常識を覆してのスタート。近所の人がかけてくる第一声は「何を始めるの?」ではなく「仏壇はどうしたの?」というプレッシャーでした。
「代々長男が受け継ぐということが本来の形だったんでしょうけれど、住むべき人が帰ってこず、ここは33年間空家でした。朽ちて無くなる運命でしかない家の新しい守り方だと思うんです」
そうして、フクギ並木のなかにひとつの風景が残りました。
宿を経営しながら、暮らしながら、地域との関わりは深くなり、2011年に「NPO 備瀬・島づくりの会」を立ち上げました。備瀬で年々増えていく事業者だけではなく、「立場がまったく違うので意見がまとまるわけがない(笑)」という海人や住民、行政にも参加してもらうのが喜屋武さんのやり方。時間をかけて、時にお酒を交わして、意見を出し合います。
「ちゃんやー」を始めて8年。当初、本家で民宿を経営することをよく思っていなかった周囲の人も、応援してくれるようになったといいます。
子どもの頃は「掃き掃除をさせられるのがいやだった」という喜屋武さん。今、掃き掃除から一日が始まる備瀬の暮らしを、誰よりも強い思いをもって見つめています。
備瀬の財産でもあるフクギ並木やイノーを守りながら、魅力溢れる観光プランを立案し、それを実行していきます。
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